日々徒然Highmount

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かわぐちかいじ「空母いぶき」を読んでみた。

以前から作品自体は知っていたのだけど、読む機会がなかった、かわぐちかいじの「空母いぶき」をついに読んでみた。

かわぐちかいじの作品は結構好きで読むことが多いんだけど、「ジパング」が海上自衛隊イージス艦が第二次大戦に干渉してしまうことによる仮想戦記という感じであったが、今回は現代の日中情勢を元にした仮想戦記的な話である。*1

 

ちなみに、ジパング護衛艦みらい(DDH-182)は架空のイージス艦で、連載開始当時就役前だったあたご型護衛艦をイメージしたものの、こんごう型をベースに様々な艦を繋ぎあわせて形作ったデザインであるとのこと。DDH-182という艦番号は現実には護衛艦いせに与えられているものである。*2

今回の護衛艦いぶきは、いずも型護衛艦をベースにした軽空母で、艦番号はDDV-192になっている。*3
いずも型はいずもがDDH-183、かががDDH-184であるが、なぜかいぶきは192という半端な番号になっている。*4
これはひょっとすると、みらいが182だったから、いぶきを192にしたのかもしれないが。
いずもをベースにした艦というところで、その意味でもジパングよりも現実に近いベクトルでの話になることが想像できる。
いぶきという名前の由来は、命名基準に則って直接的には伊吹山であるが、作中でも語られているとおり、第二次大戦中に改鈴谷型重巡1番艦として起工し、途中で設計変更を受けて空母として建造されながら、未完成のまま解体された、航空母艦伊吹の流れをくんだ名称でもある。

完全に余談だが、いずも型をベースに軽空母とするのは、「エースコンバット アサルト・ホライゾン」に登場するASF-X 震電IIにまつわる設定として、改ひゅうが型DDV*5を経て、のと型DDVとして同様の護衛艦が登場している。
スキージャンプ型甲板を装備し、STOVL機を運用するという発想は、いぶきと完全に共通しているのが面白い。

肝心の話の筋は、尖閣諸島を絡めた緊迫した情勢と、海上自衛隊初の空母配備という二本立てであり、それが中国軍による尖閣諸島および先島諸島の占領によって交錯するという流れ。安保法制が論じられていた時期に、またチャレンジングな題材だこと。

中国による尖閣諸島および先島諸島の占領の可能性、それに伴う自衛隊中国軍の戦闘の可能性、あるいは自衛隊空母配備の可能性などなどについて論じたいとは今のところは思わない。

ところで、いぶき就役に伴い横須賀に新設された第5護衛隊群、編成がちょっと変な気もする。
イージス艦はあたご(あたご型)、ちょうかい(こんごう型)の2隻、汎用護衛艦はあさぎり型のゆうぎりとせとぎり、そうりゅう型潜水艦のけんりゅう、補給艦のおうみという陣容だが、たかなみ型むらさめ型、あるいはあきづき型を入れないことに疑問が残る。

米軍の空母打撃群の編成を見ると、近年は空母×1、ミサイル巡洋艦×1、ミサイル駆逐艦×2、攻撃型原潜×1、補給艦×1という構成のようなので、隻数や艦種編成は妥当なところだと思われるが、上の編成では対潜ヘリの運用があたご、ゆうぎり、せとぎりの3隻に限定されてしまう。*6
また、イージス艦の防空能力を補完する、防空護衛艦たるあきづき型を編成に入れていないというのは、対潜ヘリの運用とあわせてどうにも解せない。*7
艦隊防空をイージス艦が、いぶきに対する僚艦防空はあきづき型が担うのがベターではないのか。航空戦力を過信しすぎ?

また、いぶきの艦載機はF-35JBのみとのことで、早期警戒機の搭載をしていない。
E-2C/Dの搭載がないため、航空警戒管制はE-767などに頼らざるを得ないのでは?

なんか弱点だらけのように見えてしまうが、これが先々の話の伏線だったりするんだろうか。
いずれあさぎり型はあきづき型と25DD*8に入れ替わったりするとか。
あたごやちょうかいも、そのうちしれっと8200トン型護衛艦*9に入れ替わったりして。

3巻が近々出るようだが、どのような展開になるか楽しみ。

 

*1:もっとも「仮想戦記」で終わらないのがかわぐちかいじ作品の良さだと思うが。

*2:余談だが、いせ就役の前日に発売されたモーニング誌に、みらいが轟沈する回が収録されたという。

*3:いぶき型航空護衛艦なのか、改いずも型航空護衛艦なのかは不明。

*4:いぶきは海上自衛隊初の軽空母であるため、191を冠する同型艦があるわけではない。

*5:ひゅうがを改装してSTOVL機を運用できるようにした練習艦

*6:しかもあたご型は常時搭載はしていないはず……

*7:C4Iの運用を考えても、システム艦であるあきづき型は必要な気もするが。

*8:あきづき型をベースに対潜戦に比重を移した護衛艦が来年10月に進水予定

*9:1番艦は平成27年度計画で建造される、はたかぜ型の後継となるイージス艦あたご型をベースにしつつ、あたご型とは別の艦になるらしい。