日々徒然Highmount

Highmountが感じたこと、興味をもったこと、やってみたこと、ひたすら書き込んでみる。

ロボコップ(2014年版)を見た。(ネタバレ含む)

正月は面白いテレビをやっていないので、Amazonプライムビデオで暇つぶしをしている感じ。
おかげでポッドキャストの消化ができやしない。

正月早々に見たのは、2014年版のロボコップ
ポール・バーホーベンのバイオレンス全力全開な旧第1作、マーフィーを惨殺するクラレンスのキレっぷりとか、まともに動かないED-209に蜂の巣にされて血みどろになる若い重役とか、工業廃液を全身に浴びて溶ける悪党とか、ブラックジョーク満載のCMとかとかとか……さっすがバーホーベン、キレまくってる。

更に言うと、ロボコップのデザインで股間のサイズについてデザイナーと監督が言い争ったという伝説まで残してるんだから、徹底してる。

さて、今回の2014年版。バーホーベンが強烈な伝説を残した第1作、失敗ロボコップ2号たちと、ケインの脳みそでトラウマ全開な第2作、イミフ感を急激に増して、子犬になったED-209くらいしか見どころがなく晩節を汚した感すらある第3作と比べてどのようになるのかと思う一方、第1作のあの強烈すぎるアクの強さには敵わないだろうなと。

まず全体的な感想としては、随分変わっちゃったなということ。
ロボコップ自体がシャープでかっこよくなってるのは別にしても、こうも変わるのかと。
アクションや話の流れそのものは面白いんだけど、なんというか、旧作に比べると薄味だなぁと。

冒頭の中東でのシーンは、バーホーベンだったら取材クルーがテロ攻撃に巻き込まれてグロ死するくらいは平気でやったんだろうけど。

デトロイト警察がオムニ社の傘下ではなく、まだ行政機関であること、マーフィーの相棒が男性になっていること、ED-209がまともに動くこと*1、EM-208という人型ロボットが実用化されていること……

一番の違いは、ロボコップ自身だろう。
旧作のロボコップは、マーフィーは一度死亡しており、生身の部分は生体部品として使われていて、人権がほぼ皆無であること。当然死んでるので、家族との絆が断絶してしまっている。そして最初は記憶も感情も抹消されていた。
生身の部分は脳と僅かな骨格、顔の皮膚、一部の消化器官だけで、それらの細胞も機械の補助で生かされているような状態。
2014年版では、マーフィーはそもそも死んでいない。*2
爆発に巻き込まれて大幅に欠損した体を義体化して、復帰したような扱いになっていて、表面上は人権も保証されているし、記憶も残っており、家族との絆も断絶していない。
生体部分は脳、顔、肺(心臓も?)右手と意外に多い。*3
最初は旧作のようなブルースティールのボディ*4、その後後述の改造と合わせてブラックのミリタリー感あふれるものを経て、最後はまたブルースティールのボディに戻るのは、明らかに旧作を意識しているといえる。
反応速度をEM-208並かそれ以上にするため、知覚を司る部分の脳欠損を補うチップに細工して、戦闘モード時はコンピュータによる脅威判定にほぼすべてを委ねてマーフィーの意思を無視するようにしたり、犯罪記録を記憶する過程で過度のストレス状態に陥ったため、ドーパミンの量を極端に減らして感情を抑制されるなど、それなりに非人道的な行為かつ人権無視も行われているのは変わらない。

旧作にあった、記憶も感情も抹消されているはずなのに、ガンアクションは覚えていて、それがマーフィーであると気づかせるきっかけになる、という類のギミックがかなり少ない。
そもそも2014年版ではマーフィーがマーフィーであるというアイデンティティを失っていないからこそ、旧作のアイデンティティを取り戻す作業が必要じゃないという点も大きいのだろう。
それに相当するのが、感情を抑制された状態だったマーフィーに妻が駆け寄り、子供のことを話したのをきっかけに、感情を取り戻すという過程なのだろうが、旧作に比べると葛藤は割とあっさりしてるよね。

オムニ社はオムニ社で、旧作では自動車メーカーのような大企業体質で、かなり多くの従業員が出てきていたが、2014年版ではスティーブ・ジョブズイーロン・マスクのようなCEOの下に、側近が2名、科学者が数名と、かなりオムニ社側の主要な登場人物が間引かれている感じがする。*5
ロボコップが対決するのが犯罪者を経て、オムニ社になるという流れは踏襲しているが、旧作ではオムニ社の重役が相手だったのに対して、2014年版はCEO自ら敵になってしまう。

本作に感じる薄っぺらさは、マーフィーの葛藤の少なさ*6だけではなく、犯罪者の存在感の薄さもその一つだろう。
旧第1作のクラレンスに相当するバロンは思っていた以上にあっさりとやられてしまうし。
そもそも、警官殺しを屁とも思わないキレッキレのクラレンスに対して、警官殺しは割にあわないと尻込みしているバロンでは役者が違いすぎるんだろう。
結局バロンは噛ませ犬的で、警官の汚職とオムニ社の不正、個人的恨みも込みで立ちはだかるマトックスとの対決に向いてる時点で、犯罪者と戦わせる気はあまりなかったんだろうなぁ。
そもそもセラーズCEOとの対峙も、指令の解除がかなり力技で、旧第1作の第4指令に抗えなかったものの、会長の「おまえはクビだ!」からの流れのような巧みさと爽快さに欠けているのが残念。

一方、サミュエル・L・ジャクソン演じるパット・ノヴァックが司会のテレビ番組の演出は、旧作のようなブラックさはないものの、マスコミを利用した世論誘導という、いかにも現代的なアプローチだなぁと。*7

思っていた以上によく出来ていたが、旧作を超えているわけでもない、というのが率直な総括になるかなぁと思うけど、続編を期待したい流れではあった。
しかしオムニ社、セラーズCEOが死んだら、あのワンマンっぽい企業は瓦解しそうだよなぁ……

 

*1:デザインは旧作のED-209のほうが好きだった。

*2:爆破事件は「殺人未遂事件」扱い。

*3:右手が生体パーツである意味がいまいちよくわからないが。

*4:途中出てくるデザイン案は旧ロボコップだったが、変な変形ギミックのせいでボツに……

*5:重工メーカーというよりはIT企業的なイメージ。

*6:それでもロボコップになる段階での葛藤は旧作より良く出来てるとは思う。

*7:その割にインターネットの存在感が薄かったが。