日々徒然Highmount

Highmountが感じたこと、興味をもったこと、やってみたこと、ひたすら書き込んでみる。

UPQ Phone A01、技適未取得で出荷

家電ベンチャー、UPQという会社が設立され*1、低価格Androidスマートフォン「UPQ Phone A01」も商品の一つとして発表された。

k-tai.impress.co.jp

CPUはMediaTekのMT6735(1.5GHzクアッドコア*2でメモリ1GB、内蔵ストレージは8GB、などなどのスペックであるが、正直この端末はあまりよろしくないなと思っていた。
CPUはともかくとして、まずメモリと内蔵ストレージの容量が少なすぎる。
格安SIMロックフリースマートフォンにはありがちなスペックではあるのだが、アプリも容量が大きくなってきている昨今、このメモリ容量とストレージ容量の少なさではあっという間に容量を食い潰すのは目に見えているからだ。

というのも、これは実際、フリービットモバイル(現トーンモバイル)のPandAセカンドロットを使っての感想で、これもメモリ1GB、内蔵ストレージが8GBであるが、最初は思っていたよりも快適と思っていたのだが、アプリのアップデートを行ううちにストレージを食いつぶし、終いにはアップデートすら出来なくなってしまう。
microSDカードに移せるアプリならともかく、そうではないGoogleアプリケーションなどでこの有様なのだ。
ここまで至ってしまうと、全体的な動作そのものも緩慢になり、通常の使用ですらストレスを覚えるようになる。
用途を限定しても、結局同じことで、根本的解決に至ることはなかった。

話が脱線したが、UPQ Phone A01のスペックを見た途端、この端末への興味はあっさりと失せた。

で、最近になって出荷が始まったようで、ちらほらと入手報告を見るようになったが*3、馬鹿じゃねーのと言いたくなるようなアクシデントが発生していた。
技適マークの表示を見ると、電話機としての認証が通っていない*4ため、この端末で通話をすると法に触れるのでは?というのだ。
直後、UPQから公式に回収のアナウンスが出た。

upq.me

技適表示の記載ミスと言うのである。
技適マークの表示は、たとえ認証をちゃんと取っていたとしても、正しく表示しなければ法的に認められているとみなされない。
これだけでもかなりハイレベルの大ポカなのである。*5

が、事態はこれに留まらなかった。
電話機としての認証だけではなく、そもそも技適を通過してないんじゃないの?という話が飛び出した。
そうなれば、技適未通過の違法無線機を国内企業が堂々と販売していたことになる。

その後、公式アナウンスも訂正されるに至った。

upq.me

発表の内容につきまして、「該当の製品に関する技術基準適合認定は取得」と記載しておりましたが、誤りでした。本日、総務省総合通信基盤局より電気通信事業法及び電波法に関する認証が未発行であるとの指摘を受けました。

 

いただいた指摘を踏まえ、製造工場ならびに認証取得代理会社に事実関係を確認いたしましたところ、正式な認証を前にして製造工場が出荷していたことが判明いたしました。 

技適を通っていないということを総務省から指摘される*6という大失態を演じているのである。
というか、正式な認証を受ける前に出荷出来るだけの数を製造していたということになる。
これは技適という制度をかなり甘く見過ぎなのではないか。

本来であれば弊社が認証を確認・精査すべき立場であり、この確認を怠りましたことが要因です。

んなこたぁ言われなくてもそのとおりです。それ以外あり得ないんですから。

正直、この顛末には唖然とさせられたというのが本音ではある。

というか、「本来有り得ない理由で」というフレーズは今回のために存在していたのではなかろうか。ちょっと出すのが早すぎたよ、日本通信さん……

コンプライアンスコンプライアンスとやかましい昨今、企業が企業活動を行うにおいて、各国の法を遵守することが強く求められている。
例えうっかりや勘違いであっても、結果として法を犯すことが認められず、従業員に対してもそうした教育や研修を課している企業も多いことと思う。*7

携帯電話を販売するにおいて、電気通信事業法や電波法というのは最も注意を払わなければいけない法規のひとつであって、端末を製造販売するにあたっては技適(技術基準適合認定)は確実にクリアしなければいけない項目である。
この点において、UPQは認識が甘すぎるのではなかろうか。
この会社、他にもBluetoothを使う機器を複数発表しているが、他はちゃんとできるんだろうな?という疑念すらも湧いてくる話である。

しかしこの話、UPQばかりを責めるのもやや気の毒な面がある。*8
UPQは単独で製造販売を行っているのではなく、設計のアドバイスや工場との調整、品質管理などといったバックヤード業務はCerevoが業務委託を受けて行っているという。
Cerevoであればそのへんのノウハウは持っていそうなもので、だからこそUPQはCerevoにそのあたりの専門的なバックヤード業務を委託しているのではないだろうか。
Cerevoがどのあたりまでこの辺の責任を負っているのかは不明だが、出荷に際してのチェックが甘かったのでは?とは思わされるところである。
技適の通過確認や正しく認証番号が記載されているかも、品質管理の一つでは?
というか、それ以前に技適の認証を受ける前に工場が稼働してるって、どんな調整してるんだという話なんだけど。

今後購入者に対しては回収と修正品の再送が行われるとのことだが、この問題ってそれで終わらない気がする。
回収から再提供、あるいは第二ロットの出荷までは当然かなりの時間がかかると思われるが、そうなると注文のキャンセルや返金を求めるユーザーも出てくるのではないか。
そうなると、出来たばかりの会社のこと、資金がショートして……という展開も想像できなくはないのである。
もちろんこの製品ひとつでそこまでに至るかはわからないが、どう転んだところで笑えない話には違いない。

*1:社長は元カシオ計算機で商品企画業務に携わっていたという中澤優子

*2:と言いつつ実際は1.3GHzとのこと。おいおい。

*3:なんかここらへんでW-CDMA Band 6の接続問題だの、microSDカードへのアプリ移動がロックされてるだのという話が出てきていろいろ疑問を持ったんだけど……

*4:本来電話機としての認証が通っているのであればADと記載されるべきところ、Dとしか記載されていない。これではデータ通信は出来ても通話が行えない。

*5:とはいえ、ラベルの記載ミスだけなら、MozillaのFlameという先輩がいるんだけど……

*6:というかこれはむしろ怒鳴りこまれたのでは?

*7:かくいう私も、その手の研修を何度も受けさせられている。

*8:とはいっても一番の責任を負うのはUPQに他ならないのも事実だが。